育児時間は乳児を育てるための時間として合計1時間を女性労働者に与えるよう、労働基準法で定められています。しかし、本来は育児を男女が協力してやるべきこととして女性だけに特化せず、男性も利用できる制度であることが望まれます。
看護休暇は1年に5日間、ケガや病気になった子供を看病するための休暇として育児・介護休業法で定められていますが、働く女性たちの間から5日間では少なすぎるという声があがっています。
育児時間
労働基準法第67条第1項では育児時間に関して「生後満1年に達しない生児を育てる女性は休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる」と定め、第2項で「使用者は、前項の育児時間中はその女性を使用してはならない」としています。休憩時間とは6時間を超える労働で45分以上、8時間を超える労働で1時間以上与えなければならない休憩のことで、この時間以外に育児のための時間としてさらに1日2回30分ずつ、合計1時間を乳児を抱える女性に与えなければならないということです。
請求する時間は労働時間中であればいつでもかまいません。労働時間の初めと終わりに請求することも可能です。これは授乳やおむつ替えなどの世話をするために与えられた時間ですが、実際には保育園への送迎のための時間として利用されているようです。1日の労働時間が短い場合、具体的には4時間以内であるような場合は、育児時間は1日に1回30分でよいとされています。この育児時間中は有給、無給は問われていませんが、労働協約や就業規則で明記しておくことが必要です。
看護休暇
小学校就学前の子供を育てているパート主婦は事業主に1年度につき5労働日を上限にケガをしたり、病気にかかった子供を看病するための休暇を請求することができます。
このとき、@パート主婦の氏名、Aケガをしたまたは病気にかかった子供の氏名と生年月日、B看護休暇をとる日、C子供のケガや病気の事実を明らかにしなければなりません。
Cに関しては、事業主がその事実を証明する書類の提出をパート主婦に求めることができます。パート主婦は証明書 ( 医師の診断書など ) を求められたときは提出しなければなりません。
ただし、雇用された期間が6ヶ月未満のパート主婦や1週間の所定労働日数が2日以下の者については、過半数組合または労働者の過半数代表者との書面による協定で看護休暇を認めないことを定めれば、事業主は看護休暇を与える必要はありません。
育児休業とは
育児休業とは1歳未満の子供 ( 原則。「保育所に申し込みをしたが、順番待ちで入れなかった」などの条件を満たせば1歳から1歳6ヵ月の子供を養育するための休業延長もできる ) を育てるパート主婦 ( 女性の場合は産婦など ) が、子供が1歳になるまでの1つの期間を特定して、1人の子供に対して1回のみ事業主に申し出ることができる休業のことです。育児休業は男女を問わず申し出ることができます。しかし、雇入れ後1年未満のパート主婦で労使協定で育児休業をすることができない者として定められている場合は、育児休業を取得することができません。
有期雇用者の場合は1年以上継続雇用されていて ( 3ヶ月や6ヶ月などの短期契約を繰り返し更新している場合を含む ) 、子供が1歳に達する日 ( 1歳の誕生日の前日 ) を超えて引き続き雇用されることが見込まれる場合のみ ( 2歳になるまでに労働契約が終了し、その後の契約更新がないことが明らかである場合を除く ) 育児休業の申し出をすることができます。事業主がパート主婦が育児休業を取得したことを理由としてパート主婦を解雇したり、パート主婦に対して不利益な取り扱いをすることは禁止されています。 ( 育児・介護休業法10条 )
育児休業の申し出
パート主婦は原則として育児休業を開始する1ヵ月前 ( 子供が1歳以上1歳6ヶ月までの場合は2週間前 ) までに休業の開始予定日と終了予定日を決めて書面による手続きを行います。
休業の申し出のあった日から休業開始予定日までが1ヵ月に満たなかった場合は、原則として休業開始予定日から申し出から1ヵ月後までの間で事業主が自由に設定できます。
ただし、出産予定日前に子供が生まれた場合や子供の親である配偶者が子供の養育をすることが困難な状況になった場合は、育児休業の申し出があった日から1週間後までの間で事業主は設定することができます。
パート主婦が育児休業の申し出を行った後、開始開始予定日前であれば撤回することができますが、1度撤回すると、その子供については原則として再び休業の申し出をすることはできないのでパート主婦は注意しなければなりません。
育児休業の拒否
事業主は原則としてパート主婦から育児休業の申し出があった場合はこれを拒否することはできません。事業主はパート主婦が育児休業の申し出をしたことや育児休業をしたことを理由として不利益な扱いをしてはなりません。不利益な取り扱いとは解雇、退職、自宅待機、降格、減給またはボーナスの算定に不利益な方法を使うこと、不利益な配置の転換のほか、正社員をパートなどの非正規社員とする労働契約の変更を強要することも含まれます。
ただし、以下の者について過半数組合または過半数代表者との書面による協定で育児休業を認めないことを定めた場合は、育児休業の適用除外者となり、パート主婦からの育児休業の申し出を拒否することができます。
@雇用期間が1年未満の者
A配偶者または子の親、内縁の夫 ( または妻 ) が常態として子供を育てることができる者
B育児休業の申し出があった日から1年以内に雇用関係が
終了することが明らかな者
C1週間の所定労働日数が2日以下の者など
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事業主の講ずべき措置
パート主婦が育児休業を取得した場合は、休業期間中の待遇、職場復帰後の賃金や配置などの労働条件、休業後の労務開始時期、休業期間中の社会保険料の支払いに関することなどについてあらかじめ定めておき、パート主婦に周知するよう努めなければなりません。
また、育児休業の申し出があった場合はこれらの労働条件についてパート主婦に書面によって明示するよう努めなければなりません。(努力義務なので強制力はありません)
育児休業給付
育児休業給付とは雇用保険法で定められている育児休業者向けの保険給付金のことで、育児休業基本給付金と育児休業者職場復帰給付金の2種類があります。
育児休業基本給付金は労働者の休業前賃金の3割、育児休業者職場復帰給付金は1割の保障をします。事業主が支払う育児休業中の賃金については労使の話し合いによって決定します。
07年4月に職場復帰した者から10年3月に育児休業を開始した者までを対象として、給付金の割合が現在の4割 ( 育児休業基本給付金3割+育児休業者職場復帰給付金1割
) から5割 ( 育児休業基本給付金3割+育児休業者職場復帰給付金2割 ) に引き上げられます。
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育児休業基本給付金
対象者は満1歳未満の子供を養育するために育児休業をする雇用保険の被保険者で、休業開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算して12ヶ月以上ある労働者です。
2年間のうち、病気、ケガ、出産、事業所の休業などで連続30日以上賃金の支払がなかった場合は、2年間にその期間を加えることができます ( 最長4年間
)。また、保育所に入れなかった場合(いわゆる待機児童)などで育児休業が例外的に1歳6ヶ月まで認められた場合は給付金の支給も延長されます。有期雇用者の場合、上記の条件に加えて次のどちらかの条件にあてはまらなければなりません。
@休業開始時に同じ事業主の下で1年以上継続雇用されていて、かつ休業終了後にその事業主の下で労働契約が更新され、その後3年以上継続雇用される見込みがあること。
(つまり、1年以上継続雇用→育児休業→3年以上継続雇用の予定)
A休業開始時に同じ事業主の下で労働契約が更新され、3年以上継続雇用されており、かつ休業終了後にその事業主の下で1年以上継続雇用される見込みがあること。
(つまり、3年以上継続雇用→育児休業→1年以上継続雇用の予定)
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支給額は賃金の3割相当額です。ただし、事業主から休業期間中の賃金が支払われ、給付金と賃金の合計額が休業前賃金の8割を超える場合は8割になるように給付金が減額調整されます。賃金が休業前賃金の8割以上支払われる場合は給付金は不支給となります。
育児休業者職場復帰給付金
対象者は育児休業基本給付金の支給を受けることができ(支給を受けていなくても良い)、休業前に雇用されていた事業主に連続6ヶ月以上雇用されている者です。支給額は休業前賃金の1割相当額です。
残業 ( 時間外労働 ) と深夜業の制限
事業主は小学校入学前の子 ( 6歳の誕生日後の3月31日までにある子 ) を養育するパート主婦 ( 雇用期間が1年未満の者や配偶者に子供の養育を任せられる者などを除く
) が請求したときは、事業の運営を妨げない範囲で1ヶ月24時間、1年150時間を超えて残業をさせてはなりません。同じく深夜業 ( 午後10時から午前5時まで
) に関しても、請求があった場合はさせてはなりません。 ( 雇用期間が1年未満の者や所定労働時間の全部が深夜である者を除く。) ただし、深夜業の制限は1ヶ月以上6ヶ月以内とし、その制限期間の開始1ヶ月前までにパート主婦は制限開始予定日と制限終了予定日を明らかにしなければなりません。時間外労働と深夜業の制限の請求は何回でも行うことができます。
短時間勤務などの導入
事業主は、育児休業をとらずに働きながら1歳未満の子供の養育をしているパート主婦が希望する場合は、短時間勤務 ( 本来のパートタイム労働 ) やフレックスタイム制の導入、時差出勤の制度、所定外労働をさせない制度、託児施設の設置のうち、いずれかの措置をとらなければなりません。
1歳から3歳未満の子供を養育するパート主婦に対しては育児休業に準ずる制度や短時間勤務などの措置をとらなければなりません。
また、3歳から小学校入学前の子 ( 6歳の誕生日後の3月31日までにある子 ) を養育するパート主婦に対しても育児休業に準ずる制度や短時間勤務などの措置を講じるよう努めなければなりません。
( 努力義務なので強制力はありません )
そのほか育児介護休業法では、事業主が労働者に転勤を命じる際に、子供の養育が困難になる恐れのある労働者に対する配慮義務や、労働者の職業生活と家庭生活の両立が図られるようにすることを目的として職業家庭両立推進者の選任の努力義務を定めています。
児童手当
支給期間は子供が生まれた翌月から小学6年生を卒業するまでです。支給額は3歳未満の子が1人あたり月額10000円、3歳以上の第1子・第2子が月額5000円、3歳以上の第3子以降が月額10000円です。受給者は子供でなく、その子供を養育し、生計維持している者で、実の親でなくてもかまいません。受給者の所得制限があるので注意が必要なのですが、特例給付として、所得制限により児童手当を受けられないサラリーマンなどに対する給付も、所得が一定額未満の場合に限って支給される場合もありますので、支給対象になるかどうかは市区町村の福祉課窓口などへ問い合わせたほうがよいでしょう。
健康保険の一部負担金
健康保険の一部負担金 ( 窓口で支払う医療費 ) については、現在3歳未満の乳幼児は2割負担となっていますが、少子化対策の一環として08年4月から小学校入学前までに拡大されます。
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育児休業中の社会保険料の免除
一定の手続きを踏めば、育児・介護休業法に定められている育児休業を取得している期間の社会保険 ( 健康保険と厚生年金保険 ) の保険料が免除されます。
普段は事業主とパート主婦が保険料を半額ずつ出し合っていますが、事業主が保険者 ( 政府または健康保険組合 ) に申し出れば、パート主婦の育児休業期間中は事業主とパート主婦の両方の負担分が免除されます。
具体的には育児休業を開始した日の属する月から、終了した日の翌日の属する月の前月まで保険料が無料となります。厚生年金保険料の場合は免除を受けた期間は保険料を支払ったものとみなされるので、将来の年金額が減ることはありません。
育児休業終了後の厚生年金保険料の特例
一定の手続きを踏めば、育児休業終了後に職場復帰し3歳未満の子供を育てながら働いている者は、実際に支払う保険料金額ではなく育児休業前の保険料金額を払っているものとみなされます。
育児・介護休業法で定める育児休業は原則1年間なので、その後、親である労働者が復職しても子育てをしながらフルタイムで働くことは難しく、その分賃金が減り、保険料金額も減ってしまうので結果的に受け取る年金額も減ってしまいます。このような事態を避けるために育児休業終了後の厚生年金保険料に関しては特例が定められています。
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