介護休業とは
高齢化、核家族化にともなって、病気や障害のある家族を介護しながら働く労働者が増え、その両立の負担の大きさが注目を集めるようになりました。そこで95年に育児休業法の一部が改正され、介護休業についての法律も盛り込まれることになりました。新たにできた育児・介護休業法では、育児とともに介護に関しても労働者の職業生活と家庭生活が両立できるようにするため、介護休業の対象者、請求方法などについて定めています。
介護休業とは要介護状態にある対象家族を介護するためにとる休業をいいます。育児休業と異なるのは、パート主婦の配偶者が常態として対象家族を介護できる状態にあっても、パート主婦が介護休業を請求できるという点です。その理由は、24時間介護が必要になる場合があるためです。
要介護状態とは
要介護状態とはケガや病気、または身体上、精神上の障害により2週間以上の長期にわたって常時介護を必要とする状態をいいます。対象家族とは@配偶者 (
事実婚含む
)、父母、子、A配偶者の父母、B労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫をいい、対象家族1人につき、原則1回の介護休業を請求することができます。
介護休業の適用除外者
介護休業の適用除外者は次のとおりです。 (
育児休業の場合とほとんど同じですが、配偶者が常態として介護できる状態にあっても適用除外とならない点が異なります。)
法律上当然に適用除外となる者 @日々雇用される者 A期間を定めて雇用される者 ただし、同一の事業主に1年以上雇用された者や、介護休業開始予定日から93日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者には適用されます。 (
93日経過日から1年間のうちに労働契約期間が終了し、契約更新がないことが明らかである場合は適用除外となります。)
過半数組合または過半数代表者との書面による協定で介護休業を取得することができない者として定めた場合は、適用除外となる者 @雇用期間が1年未満の者 A93日以内に労働契約期間が終了する者 B1週間の所定労働日数が2日以下の者
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介護休業の申し出と取得可能日数
介護休業の申し出は、対象家族1人につき、通算93日請求することができます。93日以内なら、何日でもかまいません。 (
勤務時間の短縮を利用する場合は、その利用日も含めて93日以内とします。)
手続きは介護休業申出書を事業主に提出して行いますが、申し出は同一の対象家族について原則1回のみすることができます。対象家族が要介護状態であることや介護休業期間の開始日と終了日などを明らかにしなければなりません。
介護休業は最長で93日請求することができますが、次のようなことが起こった場合は、その時点で介護休業期間が終了します。
@介護休業終了予定日の前日までに対象家族の死亡、または離婚、離縁などにより介護する必要がなくなった。 A介護休業終了予定日までに産前産後の休業期間、新たな介護休業期間、育児休業期間が始まった。
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介護休業延長にともなう休業終了予定日の変更は当初の休業終了予定日の2週間前までに事業主に申し出ることで、1回のみ可能です。また、介護休業の申し出を撤回する
( 介護休業をするつもりで休業の申し出をしたが、その後、休業の必要がなくなったので介護休業をしない旨を事業主に申し出る )
場合は、休業開始予定日の前日までに行うことができます。撤回した休業に関して、やはり再びその必要が生じ、同じ対象家族に関する介護休業をすることになったときは、その申し出を1回のみ行うことができます。
( 撤回の撤回 )
介護休業の拒否
事業主は原則としてパート主婦から介護休業の申し出があった場合はこれを拒否することはできません。 ( ただし、介護休業の適用除外者に対しては拒否できます。
)
事業主はパート主婦が介護休業の申し出をしたことや介護休業をしたことを理由として不利益な扱いをしてはなりません。不利益な取り扱いとは解雇、退職、自宅待機、降格、減給またはボーナスの算定に不利益な方法を使うこと、不利益な配置の転換のほか、正社員をパートなどの非正規社員とする労働契約の変更を強要することも含まれます。
介護休業給付金
対象者は対象家族の介護をするために介護休業をする雇用保険の被保険者で、休業開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算して12ヶ月以上ある労働者です。2年間のうち、病気、ケガ、出産、事業所の休業などで連続30日以上賃金の支払がなかった期間がある場合は、2年間にその期間を加えることができます(最長4年間)。日々雇用される者や、一定条件を満たした期間の定めのある者も含まれます。
1人の対象家族が要介護状態になるたびに1回の介護休業がとれます。2回目の介護休業がとれるのは以下の条件に当てはまる場合です。
@同一の対象家族が要介護状態から1度回復し、再び要介護状態になったこと A同一の対象家族について介護休業給付金の支給日数の合計が93日以内であること
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支給金額は支給対象期間ごとに原則、休業開始時賃金の4割相当額となっています。
ただし、事業主から休業期間中の賃金が支払われ、給付金と賃金の合計額が休業前賃金の8割を超える場合は8割になるように給付金が減額調整されます。賃金が休業前賃金の8割以上支払われる場合は給付金は不支給となります。
残業 ( 時間外労働 ) と深夜業の制限
事業主は要介護状態にある対象家族を介護するパート主婦 ( 雇用期間が1年未満の者などを除く )
が請求したときは、事業の運営を妨げない範囲で1ヶ月24時間、1年150時間を超えて残業をさせてはなりません。同じく深夜業 ( 午後10時から午前5時まで )
に関しても、請求があった場合はさせてはなりません。 ( 雇用期間が1年未満の者や所定労働時間の全部が深夜である者を除く。)
ただし、深夜業の制限は1ヶ月以上6ヶ月以内とし、その制限期間の開始1ヶ月前までにパート主婦は制限開始予定日と制限終了予定日を明らかにしなければなりません。時間外労働と深夜業の制限の請求は何回でも行うことができます。
短時間勤務などの導入
育児・介護休業法では事業主に対して、パート主婦が仕事と介護を両立できるように以下のいずれかの制度を導入し、93日以上の期間にわたって利用できるようにすることを義務付けています。短時間勤務制度は介護休業と併用することが可能です。
@通常より短い労働時間を与えること A一定の時間単位で勤務しない時間帯を認めること Bフレックスタイム制や勤務時間の繰上げ、繰下げ C介護サービスの費用の助成
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このほか育児介護休業法では、事業主が労働者に転勤を命じる際に、家族の介護が困難になる恐れのある労働者がいる場合の配慮義務や、労働者の職業生活と家庭生活の両立が図られるようにすることを目的として職業家庭両立推進者の選任の努力義務を定めています。
また、育児休業では健康保険料と厚生年金保険料は保険者に申し出れば、その申し出た月の分から、休業終了日の翌日が属する月の前月分までパート主婦と事業主双方の負担が免除されますが、介護休業は短期間のため、この制度はありません。
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