ポジティブアクション=男女差別にならない措置
改正男女雇用機会均等法では労働者の採用・募集、配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、雇用形態と職種の変更、定年・退職勧奨・解雇、労働契約の更新、セクハラ、妊産婦の健康管理措置において、性別によって差別することを禁止しており、基本的には男性が優遇されても、女性が優遇されてもいけないことになっています。ただし、特例として男女雇用機会均等法の第8条では「事業主が雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない」と定めています。
この「支障となっている事情」とは男女の役割分担意識に根ざす企業の制度や慣行に基づいて男女間に事実上の格差が生じていることをいいます。この支障となっている事情の有無は各部署などの管理区分ごとに女性の人数が男性の人数よりも著しく少ないかどうか
( 40%以下かどうか ) で判断します。そして女性が著しく少ない場合に、事業主が女性の人数を増やすことを目的として女性に優遇措置をとることは違法でないという意味です。このように女性を優遇する措置をとることをポジティブアクション ( 積極的改善措置 positive action ) といいます。「ポジティブアクション」はヨーロッパで広く使われている言葉ですが、アメリカでは女性だけでなく、被差別少数民族の雇用や教育の機会を増やすための同様の措置を「アファーマティブアクション
( affirmative action) 」と呼んでいます。
指針で取り上げられているポジティブアクションについては各ページでご紹介しています。下記のリンクからご覧ください。
ポジティブアクション以外で均等法違反にならないとき
ポジティブアクション以外にも性別による差別が適用されない場合があり、以下に当てはまるときは均等法違反とはなりません。
A…以下の条件の下で働く労働者
@ 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である。
A 守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である。
B @A以外で、宗教上、風紀上、スポーツ競技の性質上など男女のいずれかのみに従事させる必要があると認められる。
B…労働基準法の年少者の深夜業の原則禁止、坑内業務の就業制限もしくは妊産婦以外の女性の危険有害業務の禁止の規定により女性を就業させることができないこと、または保健師助産師看護師法第3条の規定(
助産師の定義について「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。」としている)により男性を就業させることができないことから、通常の業務を遂行するために、労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与えたり、均等な取扱いをすることが困難であるとき。
C…風俗や風習などの違いによって男女のいずれかが能力を発揮し難い海外勤務が必要な場合や、特別な事情により労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与えたり、均等な取扱いをすることが困難であるとき。
違反行為の改善
事業主が男女雇用機会均等法に違反する行為をしていて、パート主婦がその改善を求めてもなかなか応じてもらえない場合はどうすればいのでしょうか。第29条では「必要な場合には厚生労働大臣の助言・指導・勧告ができる」と定めています。そして第30条で「厚生労働大臣は募集・採用、配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、職種と雇用形態の変更、定年・解雇・退職勧奨、労働契約の更新、間接差別、婚姻・妊娠・出産などを理由とする不利益な取り扱い、セクハラ、妊産婦への健康管理措置について違反している事業主に対し、勧告を受けても従わなかったときは企業名を公表できる」としています。それでも問題が解決しない場合は都道府県労働局の総合労働相談コーナーや雇用均等室で調停を行うことになります。
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