国際基準を設定するための労働条約と勧告は、ILO ( 国際労働機関 ) の国際労働総会で、各国の政府と使用者代表、労働者代表の三者が等しい権利のもとに発言し、投票を行うことで採択されます。採択された条約を加盟国が批准すると、その規定を国内法で制定する拘束力が生じます。勧告とは使用者側の反対が強くて条約として採択することができなかったもので、政策、立法、慣行の指針となり、努力義務ではありますが条約よりも高い水準の内容となっています。ILOは批准国の条約と勧告の運用状況を監督するための専門委員会を設置し、批准国から年次報告を受けます。
同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約 ( 100号 )
日本は1967年に批准済み。いわゆる同一価値労働同一賃金の原則の元となる条約で、中核的労働基準の8条約の1つである。40年前に批准したにもかかわらず、現実はフルタイム労働者とパート労働者、男性と女性の間には賃金格差があり、大きな問題となっている。ちなみに、同一価値労働同一賃金と同一労働同一賃金は似て非なるものである。同一価値労働とは労働の種類は異なっても、その価値が同じと判断されるものであり、同一労働とは労働の種類・内容が同じであるものをいう。同一労働を同一賃金にするのは当たり前であるが、異なる労働に対して同一価値があるのかどうかを判断するのは簡単ではないという点が、この問題を難しくしている原因のひとつであると考えられている。
雇用及び職業についての差別待遇に関する条約 ( 111号 )
日本は未批准。労働に関する条約としてだけでなく、人権保障条約としての性質も併せ持ち、雇用と職業に関するあらゆる差別待遇を禁止している。ILOが定める中核的労働基準
( 労働に関する最も重要な基準 ) の8条約の1つで、ILO加盟国はこの条約を批准していなくても、「誠意をもって、憲章に従って、これらの条約の対象となっている基本的権利に関する原則を尊重する義務を有する」とされており、日本も例外ではありません。差別待遇とは、「人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身、社会的出身などに基づいて行われるすべての差別、除外または優先で、雇用や職業における機会または待遇の均等を破ったり害したりする結果となるもの」をあらわすが、一部の業務についての差別や除外、優先は差別待遇とはならないと規定している。
家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇の均等に関する条約 ( 156号 )
日本は1995年に批准済み。育児や介護のために職業生活に支障をきたすような男女の労働者に対して、あらゆる保護や便宜を提供し、家族的責任と職業的責任とが両立できるようにすることを目的とする。条約と同時に採択された勧告(165号)では次のような具体的措置を規定している。
@パートタイム労働者および臨時労働者の労働条件は、フルタイム労働者および常用労働者の労働条件と同等であるべきである。
Aパートタイム労働者はフルタイム雇用への転換の自由を与えられるべきである。
パートタイム労働に関する条約 ( 175号 )
日本は未批准。
条約
第1条 パートタイム労働者とは、比較しうるフルタイム労働者よりも通常の労働時間が短い労働者である。
第3条 @特別な問題の存在、A労使協議を前提に特定分野労働者や特定事業所への適用を除外できる。ただし、その理由を示し、ILOへ報告する。
第4条 @団結権・団体交渉権・代表権、A労働安全衛生上の権利、B雇用・職業上の差別禁止についてフルタイム労働者と同等とする。
第5条 時間給、出来高給で比例的に計算した基本的な賃金において、フルタイム労働者を下回らないようにする。
第6条 職業活動に基づく法定社会保障制度をフルタイム労働者と均等とする。
第10条 フルタイム労働者との相互転換は、労働者の自発的意思に基づくようにする。
勧告
第5条 雇用契約や労働条件について、書面により契約、説明を行う。
第7条 フルタイム労働者と同等の条件を受けられるように、@母性保護、A雇用の終了、B年次有給休暇、有給公休日、C疾病休暇を保障する措置をとる。
第10条 基本的賃金以外に関して公平に処遇する。
第12条 時間外労働等は、労働者、事業場双方の利益に配慮し、可能な限り制限し事前通知を行う。
第13条 あらゆる休暇に関する公平な利用を保障する。
第15条 訓練、昇進、職業上の移動に関する制約を克服するための措置をとる。
第19条 正当な理由がなければ、フルタイムとの相互転換拒否を解雇の理由としてはならない。
ILO条約以外にもパート主婦に関する条約があるので、ご紹介しておきます。
国連女性差別撤廃条約とは
正式な邦訳は「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」。日本は1985年に批准し、これをうけて男女雇用機会均等法が制定された。この条約では労働の場だけでなく、教育や家庭などあらゆる面での男女差別の撤廃をうたっている。
ここでいう差別とは「性に基づく区別、排除または制限であって、女性が男女の平等を基礎として人権および基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害し、または無効にする効果または目的を有するもの」と定義している。ただし、母性保護のための特別措置をとることは差別ではないとしている。
パートタイム労働法の内容を具体的に示したものがパートタイム労働指針です。正式名称は「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」といいます。指針の内容は以下のとおりです。
事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針
( 平成16年12月28日厚生労働省告示第456号 )
第1 趣旨
この指針は、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第3条第1項の事業主が講ずべき適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善
( 以下「雇用管理の改善等」という。) のための措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものである。
第2 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置を講ずるに当たっての基本的考え方
事業主は、短時間労働者について、労働基準法 ( 昭和22年法律第49号 ) 、最低賃金法 ( 昭和34年法律第137号 ) 、労働安全衛生法 ( 昭和47年法律第57号 ) 、労働者災害補償保険法 ( 昭和22年法律第50号 ) 、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 ( 昭和47年法律第113号 ) 、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 ( 平成3年法律第76号 ) 、雇用保険法 ( 昭和49年法律第116号 ) 等の労働者保護法令を遵守するとともに、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して処遇するべきである。中でも、その職務が通常の労働者と同じ短時間労働者について、通常の労働者との均衡を考慮するに当たっては、事業主は、次に掲げる考え方を踏まえるべきである。
1 人事異動の幅及び頻度、役割の変化、人材育成のあり方その他の労働者の人材活用の仕組み、運用等 ( 2において「人材活用の仕組み、運用等」という。)
について、通常の労働者と実質的に異ならない状態にある短時間労働者については、当該短時間労働者と通常の労働者との間の処遇の決定の方法を合わせる等の措置を講じた上で、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することにより、通常の労働者との均衡の確保を図るように努めるものとすること。
2 人材活用の仕組み、運用等について、通常の労働者と異なる状態にある短時間労働者については、その程度を踏まえつつ、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡を図るように努めるものとすること。
第3 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置
事業主は、第2の基本的考え方に立って、特に、次の点について適切な措置を講ずるべきである。
1 短時間労働者の適正な労働条件の確保
@ 労働条件の明示
イ 事業主は、短時間労働者に係る労働契約の締結に際し、当該短時間労働者に対して、労働基準法の定めるところにより、次に掲げる労働条件に関する事項を明らかにした文書を交付するものとする。
( イ) 労働契約の期間
( ロ) 就業の場所及び従事すべき業務
( ハ) 始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
( ニ) 賃金 ( ロの ( ロ) に定めるものを除く。以下この ( ニ) について同じ。) の決定、計算及び支払の方法並びに賃金の締切り及び支払の時期
( ホ) 退職 ( 解雇の事由を含む。)
ロ 事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、次に掲げる労働条件に関する事項その他の労働条件に関する事項を明らかにした文書
( 雇入通知書 ) を交付するように努めるものとする。ただし、当該労働条件が、イにより交付する文書において、又は就業規則を交付することにより明らかにされている場合は、この限りでない。
( イ) 昇給
( ロ) 退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、1ヶ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
( ハ) 所定労働日以外の労働の有無
( ニ) 所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
( ホ) 安全及び衛生
( ヘ) 教育訓練
( ト) 休職
A 就業規則の整備
イ 短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する事業主は、労働基準法の定めるところにより、短時間労働者に適用される就業規則を作成するものとする。
ロ 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所に、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者
( ハ及びニにおいて「過半数代表者」という。) の意見を聴くように努めるものとする。
ハ 過半数代表者は、次のいずれにも該当する者とする。
( イ) 労働基準法第41条は第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
( ロ) 就業規則の作成又は変更に係る意見を事業主から聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
ニ 事業主は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにするものとする。
B 労働時間
イ 事業主は、短時間労働者の労働時間及び労働日を定め、又は変更するに当たっては、当該短時間労働者の事情を十分考慮するように努めるものとする。
ロ 事業主は、短時間労働者について、できるだけ所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させないように努めるものとする。
C 年次有給休暇
事業主は、短時間労働者に対して、労働基準法の定めるところにより、別表に定める日数の年次有給休暇を与えるものとする。 ( 別表の有給休暇の付与日数は省略
)
D 期間の定めのある労働契約
事業主は、短時間労働者のうち期間の定めのある労働契約 ( 以下このDにおいて「有期労働契約」という。) を締結するものについては、労働基準法に基づき定められた有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
( 平成15年厚生労働省告示第357号 ) の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。
イ 契約締結時の明示事項等
( イ) 事業主は、有期労働契約の締結に際し、短時間労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示するものとする。
( ロ) ( イ) の場合において、事業主が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、事業主は、短時間労働者に対して、当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示するものとする。
( ハ) 事業主は、有期労働契約の締結後に ( イ) 又は ( ロ) に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した短時間労働者に対して、速やかにその内容を明示するものとする。
ロ 雇止めの予告
事業主は、有期労働契約 ( 雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。ハの
( ロ) において同じ。) を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をするものとする。
ハ 雇止めの理由の明示
( イ) ロの場合において、事業主は、短時間労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付するものとする。
( ロ) 有期労働契約が更新されなかった場合において、事業主は、短時間労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付するものとする。
ニ 契約期間についての配慮
事業主は、有期労働契約 ( 当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限る。)
を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該短時間労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めるものとする。
E 解雇の予告
イ 事業主は、短時間労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法の定めるところにより、少なくとも30日前にその予告をするものとする。30日前に予告をしない事業主は、30日分以上の平均賃金を支払うものとする。
ロ イの予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮できるものとする。
F 退職時等の証明
イ 事業主は、短時間労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由 ( 退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)
について証明書を請求した場合においては、労働基準法の定めるところにより、遅滞なくこれを交付するものとする。
ロ 事業主は、短時間労働者が、Eの解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、労働基準法の定めるところにより、遅滞なくこれを交付するものとする。
G 賃金、賞与及び退職金
事業主は、短時間労働者の賃金、賞与及び退職金については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。
H 健康診断
事業主は、短時間労働者に対し、労働安全衛生法の定めるところにより、次に掲げる健康診断を実施するものとする。
イ 常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
ロ 深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置換えの際に行う健康診断及び6ヵ月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
ハ 一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置換えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
ニ その他の必要な健康診断
I 妊娠中及び出産後における措置
事業主は、妊娠中及び出産後1年以内の短時間労働者に対し、労働基準法及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。
イ 産前及び産後の休業の措置
ロ 健康検査等を受けるために必要な時間の確保及び健康診査等に基づく医師等の指導事項を守ることができるようにするために必要な措置
ハ その他必要な措置
2 短時間労働者の教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善
@教育訓練の実施
事業主は、短時間労働者の職業能力の開発及び向上等を図るための教育訓練については、その就業の実態に応じて実施するように努めるものとする。
A 福利厚生施設
事業主は、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、短時間労働者に対して通常の労働者と同様の取扱いをするように努めるものとする。
B育児休業及び介護休業に関する制度等
事業主は、短時間労働者について、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。
イ 育児休業又は介護休業に関する制度
ロ 子の看護休暇に関する制度
ハ 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する者又は要介護状態にある家族を介護する者に対する時間外労働の制限の措置又は深夜業の制限の措置
ニ 1歳 ( 一定の場合にあっては、1歳6ヵ月。以下ニにおいて同じ。) に満たない子を養育する者に対する勤務時間の短縮等の措置若しくは1歳から3歳に達するまでの子を養育する者に対する育児休業の制度に準ずる措置若しくは勤務時間の短縮等の措置又は要介護状態にある家族を介護する者に対する勤務時間の短縮その他の措置
C 雇用保険の適用
事業主は、雇用保険の被保険者に該当する短時間労働者について、雇用保険法の定めるところにより必要な適用手続をとるものとする。
D 高年齢者の短時間労働の促進
事業主は、短時間労働を希望する高年齢者に適当な雇用の場を提供するように努めるものとする。
E 通常の労働者への応募機会の付与等 ( →正社員への登用 )
事業主は、通常の労働者を募集しようとするときは、現に雇用する同種の業務に従事する短時間労働者に対し、あらかじめ当該募集を行う旨及び当該募集の内容を周知させるとともに、当該短時間労働者であって通常の労働者として雇用されることを希望する者に対し、これに応募する機会を優先的に与えるよう努めるものとする。
F 通常の労働者への転換に関する条件の整備
事業主は、短時間労働者の通常の労働者への転換について、これを希望し、かつ、その能力を有する短時間労働者のニーズが自らのニーズに合致する場合において、当該事業所の実情に即して、これが可能となる制度の導入、必要な条件の整備等をするように努めるものとする。
3 職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置の実施
事業主は、短時間労働者の職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置を講ずるように努めるものとする。
4 所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ労働者の取扱い
事業主は、所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ短時間労働者のうち通常の労働者と同様の就業の実態にあるにもかかわらず、労働条件その他の処遇について通常の労働者と区別して取り扱われているものについては、通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努めるものとする。
5 労使の話合いの促進のための措置の実施
@ 事業主は、短時間労働者を雇入れた後、当該短時間労働者から当該短時間労働者の処遇について説明を求められたときは、その求めに応じて説明するように努めるものとする。
A 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理の改善のための措置を講ずるに当たっては、当該事業所における関係労使の十分な話合いの機会を提供する等短時間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとする。
B 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した処遇について、短時間労働者から苦情の申し出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的な解決を図るように努めるものとする。
6 短時間雇用管理者の選任等
@ 短時間雇用管理者の選任
事業主は、常時10人以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに、短時間雇用管理者を選任し、次に掲げる業務を担当させるよう努めるものとする。
イ 本指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項について、事業主の指示に基づき必要な措置を検討し、実施すること。
ロ 短時間労働者の労働条件等に関し、短時間労働者の相談に応ずること。
A 短時間雇用管理者の氏名の周知
事業主は、短時間雇用管理者を選任したときは、当該短時間雇用管理者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示する等により、その雇用する短時間労働者に周知させるよう努めるものとする。
08年4月施行の改正パート労働法の規定に基づいて、新たな指針が出されました。指針の内容は以下のとおりです。
事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針
( 平成19年10月1日厚生労働省告示第326号 )
第1 趣旨
この指針は、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「短時間労働者法」という。)第3条第1項の事業主が講ずべき適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善および通常の労働者への転換の推進
( 以下「雇用管理の改善等」という。) に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るため、短時間労働者法第6条から第11条まで第12条第1項および第13条に定めるもののほかに必要な事項を定めたものである。
第2 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっての基本的考え方
事業主は、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たって、次の事項を踏まえるべきである。
1 労働基準法 ( 昭和22年法律第49号 ) 、最低賃金法 ( 昭和34年法律第137号 ) 、労働安全衛生法 ( 昭和47年法律第57号 )
、労働者災害補償保険法 ( 昭和22年法律第50号 ) 、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 ( 昭和47年法律第113号
) 、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 ( 平成3年法律第76号 ) 、雇用保険法 ( 昭和49年法律第116号
) 等の労働者保護法令は短時間労働者についても適用があることを認識しこれを遵守しなければならないこと。
2 短時間労働者法第6条から第11条まで、第12条第1項および第13条の規定に従い、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるとともに、多様な就業実態を踏まえ、その職務の内容、職務の成果、意欲、能力および経験等に応じた待遇に係る措置を講ずるように努めるものとすること。
3 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに際して、その雇用する通常の労働者その他の労働者の労働条件を合理的な理由なく一方的に不利益に変更することは法的に許されないこと、また、所定労働時間が通常の労働者と同一の有期契約労働者については、短時間労働者法第2条に規定する短時間労働者に該当しないが、短時間労働者法の趣旨が考慮されるべきであることに留意すること。
第3 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等
事業主は、第2の基本的考え方に基づき、特に、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
1 短時間労働者の雇用管理の改善等
@ 労働時間
イ 事業主は、短時間労働者の労働時間および労働日を定め、または変更するに当たっては、当該短時間労働者の事情を拾分考慮するうに努めるものとする。
ロ 事業主は、短時間労働者について、できるだけ所定労働時間を超えて、または所定労働日以外の日に労働させないように努めるものとする。
A 退職手当その他の手当
事業主は、短時間労働者法第8条および第9条に定めるもののほか、短時間労働者の退職手当、通勤手当その他の職務の内容に密接に関連して支払われるもの以外の手当てについても、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。
B 福利厚生
事業主は、短時間労働者法第8条および第11条に定めるもののほか、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等を目的とした福利厚生施設の利用および事業主が行うその他の福利厚生の措置についても、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取り扱いをするように努めるものとする。
2 労使の話し合いの促進
@ 事業主は、短時間労働者を雇入れた後、当該短時間労働者から求めがあったときは、短時間労働者法第13条に定める事項以外の、当該短時間労働者の待遇に係る事項についても、説明するように努めるものとする。
A 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっては、当該事業所における関係労使の十分な話し合いの機会を提供する等短時間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとする。
B 事業主は、短時間労働者法第19条に定める事項以外の、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡を考慮した待遇に係る事項についても、短時間労働者から苦情の申し出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的な解決を図るように努めるものとする。
3 不利益取り扱いの禁止
@ 事業主は、短時間労働者が、短時間労働者法第7条に定める過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたことまたは過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをしないようにするものとする。
A 事業主は、短時間労働者が、短時間労働者法第13条に定める待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めたことを理由として不利益な取り扱いをしないようにするものとする。
4 短時間雇用管理者の氏名の周知
事業主は、短時間雇用管理者を選任したときは、当該短時間雇用管理者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示する等により、その雇用する短時間労働者に周知させるよう努めるものとする。
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