パート主婦の妊娠・出産に関する保護 生理休暇・通勤緩和・勤務の軽減・健診の通院時間確保・産前産後休暇  
パート主婦のお守り
労働法基礎知識
サイトマップ
パートタイマーとは  労働契約・雇用契約  労働時間・残業代

賃金・時給  有給休暇・休憩・休日  募集・採用  配置・昇進・降格  教育訓練・福利厚生

雇用形態・職種の変更  退職・解雇  ポジティブアクション   税制と保険料

雇用保険・失業保険  健康保険   厚生年金保険  労災保険  妊娠・出産  育児  介護

セクハラ
  パート主婦に関する法律  ILO条約とパート指針  就業規則

健康診断  ユニオン・労働組合  用語の解説・標準報酬月額

妊娠・出産


女性に適用される制度

妊産婦に適用される制度

Q&A


女性に適用される制度

女性と男性は産む性と産まない性という違いがあり、産む性である女性には妊娠と出産に関わる特別な措置が必要であるとの考えから以下のような制度が定められています。
将来子供を産み育てる可能性を持つ女性たちに有害とされる業務に対して禁止や制限を設けたり、生理日の就業が困難な女性に休暇を与えることで事業主が妊娠・出産に関する保護に努め、快適な労働環境を確保するよう定めています。

坑内労働の就業制限

坑内労働とは炭鉱 ( 鉱山 ) の内部 ( 坑道 ) で行う労働で、おもに石炭を掘り出す作業のことをいいます。労働基準法では、女性の坑内労働について、妊産婦 ( 申し出た者に限る ) が行う場合と人力による掘削業務などの一部有害業務を除いて07年4月から解禁され、 以下の女性の坑内労働についてのみ制限しています。

@妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性→→坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない

A@以外の満18歳以上の女性→→坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務ほか厚生労働省で定めるものに就かせてはならない


危険有害業務の就業制限

危険有害業務とは重量物を扱う業務、有害ガス・蒸気・粉塵を発散する場所における業務、その他妊産婦の妊娠、出産、哺育 ( ほいく ) 等に有害な業務のことをいいます。
「妊婦に有害な業務」とは妊娠の正常な維持、継続、出産、母乳による育児などに有害な業務のことをいいます。

「産婦に有害な業務」とは母乳による育児などに有害な業務、「哺育等に有害な業務」とは哺育 ( 乳を与えて子を育てること ) や出産後の母体の回復に有害な業務をいいます。これらの業務は妊産婦と妊産婦以外の女性の両方に適用されます。

@重量物業務の制限
事業主は女性を以下の重量以上の重量物を扱う業務に就かせてはなりません。

年齢 重さ(キログラム)
断続作業 継続作業
満16歳未満 12
満16歳以上満18歳未満 25 15
満18歳以上 30 20

A有害ガス・蒸気・粉塵を発散する場所での業務の禁止
事業主は女性を鉛、水銀、クロム、ひ素、黄りん、フッ素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気、粉塵を発散する場所における業務に就かせてはなりません。


生理休暇

労働基準法第68条では「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合は、その者を生理日に就業させてはならない」と定めています。
著しく困難であるかどうかは、その女性の主観的な感覚でかまいません。女性の請求に加えて医師の診断書などは必要なく、日頃からその様子を知る同僚の証言などがあれば十分とされています。

また、日数については定めがないので、「1ヶ月○日まで」とか「1年間で○日まで」などと日数を決めてはならず、女性が請求した分だけ与えなければなりません。 ( 半日や時間単位でとることも可能です。) ただし、有給生理休暇の日数を決めて、無給生理休暇が無制限である場合は問題ありません。生理休暇は有給か無給か、労働協約または就業規則に明記しておく必要があります。





妊産婦に適用される制度

妊産婦とは妊娠中 ( 妊婦 ) 又は出産後1年未満の女性 ( 産婦 ) をいいます。妊産婦には子を産むという生理的特長から特別の措置を必要とするため、いろいろな制度が設けられています。新しいものとして男女雇用機会均等法が改正され、07年4月から以下の理由による解雇などの不利益な取扱いが禁止されています。

@婚姻したこと
A妊娠したこと
B出産したこと
C労働基準法で定める産前産後休業をしたこと
D均等法の母性健康管理措置 ( 時差出勤や勤務時間の短縮など ) を求めたり、受けたりしたこと
E労働基準法の母性保護措置(坑内業務の就業制限や危険有害業務の就業制限、時間外労働・休日労働・深夜業の制限、育児時間の確保、軽易な業務への転換)を求めたり、受けたりしたこと
F妊娠・出産が原因で起こる症状(つわり、妊娠悪阻、切迫流産、産後復古不全など)よって仕事の能率が低下したり、労働できなくなったこと


@ABの婚姻・妊娠・出産に関しては、これを理由とする解雇などの不利益な取り扱いだけでなく、婚姻・妊娠・出産があったときに退職することについて前もって約束しておくようなことも禁止されています。具体的には、労働協約や就業規則、労働契約に「婚姻・妊娠・出産すれば退職しなければならない」というような定めをしたり、労働契約を結ぶ際に労働者に念書を提出させたり、これらに基づく退職が社内で事実上の制度として成り立っているような場合も含まれています。


解雇その他不利益な取り扱いとは

07年4月から施行された改正男女雇用機会均等法では、妊娠や出産に基づく解雇や不利益な取り扱いの禁止についてより細かく定められています。指針ではその具体例を多く提示していますので、ここでご紹介します。解雇とその他不利益な取り扱いとは、パート主婦をはじめとする労働者に対する以下のような行為をいいます。

@解雇
A有期雇用者の契約の更新をしない
B契約更新回数の上限を当初よりも引き下げる
C退職勧奨したり、正社員をパートに転換するなど労働契約の内容変更を強行する
D降格させる
E就業環境を悪化させる
F不利益な自宅待機を命じる
G減給やボーナス、退職金の算定で不利益な扱いをする
H昇進・昇格の評価について不利益な扱いをする
I不利益な配置変更をする





Cについては、パート主婦の表面上の同意を得ていたとしても、実際は同意を強制されたのであって真意ではないと認められる場合なども含まれます。

Eの具体例としては、パート主婦に「仕事を与えない」、「雑務ばかりやらせる」などがあります。

Fの具体例としては、「産前産後休業の終了予定日を超えて休業させる」、「医師の指導に基づく休業期間を超えて休業させる」などがあります。ただし、「パート主婦が軽易な業務への転換の請求をした場合において、パート主婦が転換後の業務を特に指定せず、かつ、客観的にみても適当な業務がないためにやむを得ず休業する場合には、不利益な自宅待機を命ずることには該当しない」としています。

Gの具体例としては、「労働能率の低下が見られないのに、妊娠・出産・産前産後休暇の請求を理由として給料・ボーナス・退職金を減額する」、「妊娠・出産などが原因の不就労期間分を超えて賃金を不支給とする」、
「ボーナス・退職金の算定について不就労期間や労働能率の低下を考慮する際に、休業期間や労働能率の低下が同程度の疾病などと比べて不利になるように取り扱う、または、実際の休業期間を超えて休業したもの、実際の労働能率の低下分よりもさらに低下したものとして取り扱う」ことをあげています。

Hの具体例としては、「実際には労務の不提供や労働能率の低下がないのに、パート主婦が妊娠・出産・産前休業の請求などをしたことだけを理由として、人事考課で不利に取り扱う」、「人事考課について不就労期間や労働能率の低下を考慮する場合に、休業期間が同程度または労働能率の低下が同程度だった疾病などと比べて不利に取り扱う」ことをあげています。

Iについては、配置変更の必要性、変更前後の労働条件、通勤事情、パート主婦の将来に及ぼす影響などあらゆる事柄について総合的に判断しなければならないとしています。たとえば、通常の人事異動のルールからは逸脱した、制裁的な意味が含まれるような職務や就業場所の変更をして、パート主婦に経済的・精神的なダメージを与えることは「不利益な配置の変更を行うこと」に該当するとしています。

具体的には、「妊娠したパート主婦が業務を遂行する能力があるにもかかわらず、労働条件、通勤事情等が以前よりも悪化するような配置変更をする」、
「妊娠・出産などが原因で業務をこなすことが困難となって配置変更の必要がある場合に、このパート主婦を就かせる他の適当な職務があるのに、わざとこの職務と比べて労働条件、通勤事情などが悪化するような配置変更をする」、
「産前産後休業からの復帰するときに、原職(休業前に就いていた職務)または原職相当職に就かせない」ことをあげています。


時間外労働、休日労働、深夜業務の制限

使用者は妊産婦が請求した場合は変形労働時間制 ( フレックスタイム制を除く ) に関わらず、時間外労働をさせてはなりません。つまり、1日8時間、1週40時間を超えて就業させてはなりません。
また、災害などの緊急の場合であっても、公務のために臨時の必要があっても、妊産婦が請求した場合は休日労働をさせてはなりません。同じく、妊産婦が請求した場合は深夜業をさせてはなりません。




通勤状況の緩和と勤務の軽減

母子保健法第16条では「妊産婦は医師、歯科医師、助産師または保健師について、健康診査または保健指導を受けたときは、その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない」と定められています。これを受けて男女雇用機会均等法第12条では「事業主は厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない」としています。

さらに第13条で「事業主はその雇用する女性労働者が前条の保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない」と定めています。指針には事業主が行うべき措置として次のようなことをあげています。

妊娠中の通勤の緩和について…交通機関の混雑の程度が母体や胎児の健康に影響があるとして医師などの指導があった場合は時差通勤や勤務時間の短縮などを行う必要があります。また、そのような指導がなくても、女性から通勤緩和の申し出があった場合は担当の医師などと連絡を取り、適切な対応をとる必要があります。

妊娠中の休憩について…女性の作業などが母体や胎児の健康保持に影響があるとして医師などの指導があった場合は休憩時間の延長、休憩回数の増加などを行う必要があります。また、そのような指導がなくても、女性から休憩に関する申し出があった場合は担当の医師などと連絡を取り、適切な対応をとる必要があります。

妊娠中や出産後の症状に対する措置について…事業主は妊娠中・出産後の女性から、保健指導や健康診査で医師から指導を受けた旨の申出があった場合は、医師の指導に基づいて作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の必要な措置を講じる必要があります。また、事業主は医師の指導に基づく必要な措置がはっきりしない場合には、担当医師と連絡をとって判断を求めるなどして、作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の必要な措置を講じる必要があります。

母性健康管理指導事項連絡カードの利用について…妊娠中・出産後の女性に対する医師の指導事項が事業主に正確に伝えられることが重要となるため、事業主は、母性健康管理指導事項連絡カードの利用に努めなければなりません。

プライバシーの保護について… 事業主は妊娠中・出産後の女性の症状などに関することは個人情報なので、プライバシーの保護に特に注意する必要があります。

軽易な業務への転換

使用者は妊娠中の女性 ( 妊婦 ) が請求した場合は他の軽易な業務に転換させなければなりません。転換後の業務は女性が請求した業務であることが基本ですが、使用者が新たに軽易な業務を創設する義務を与えるものではありません。

妊娠・出産にともなう症状と講ずべき措置

事業主は女性労働者の妊娠・出産によって起こりうる症状 ( 妊娠障害 ) などに対して、医師や保健師などの指導に基づいて適切に対処し、必要な措置をとる必要があります。妊娠・出産によって起こりうる症状とは、つわり、悪阻(「おそ」と読む。ひどいつわりのこと)、貧血、流産、早産、浮腫(むくみ)、妊娠中毒症(高血圧、蛋白尿、浮腫)、静脈瘤、糖尿病、産後復古不全などです。これらの症状を抱える女性労働者に対し、軽易な業務への転換や、勤務の軽減、休憩時間の設置、妊娠障害休暇を与えるなどの措置が必要となります。


健診のための通院時間の確保

母子保健法第10条では「市町村は妊産婦もしくはその配偶者または乳児もしくは幼児の保護者に対して、妊娠、出産または育児に関し、必要な保健指導を行い、または医師、歯科医師、助産師もしくは保健師について保健指導を受けることを勧奨しなければならない」と定めています。第13条では妊産婦と乳幼児に対して健康診査を受けることも勧めています。

これを受けて男女雇用機会均等法第12条では「事業主は厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない」と定めています。妊産婦が保健指導または健康診査を受診すべき回数は以下のとおりです。
(妊娠から出産までは医師または助産師が別に定める場合はその回数とする)

時期 保健指導と健康診査の受診回数
妊娠23週まで 4週間に1回
妊娠24週〜35週まで 2週間に1回
妊娠36週〜出産まで 1週間に1回
出産後1年以内 医師または助産師の指示による



産前産後の休暇

産前の休暇…出産日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から出産日までの期間が産前の休暇になります。出産日が出産予定日よりも遅かった場合はその分延長されます。事業主は女性労働者の請求があった場合に産前の休暇を与えなければならず、請求がなければ与える必要はありません。ちなみに出産とは妊娠4ヵ月以上の分娩のことをいい、流産、早産、人工妊娠中絶の区別はありません。また、生産・死産も問いません。

産後の休暇…出産日の翌日から8週間で、出産翌日から6週間は強制休暇です。つまり、女性労働者の意思に関わりなく休暇を与えなければなりません。6週間を過ぎて女性労働者の請求があり、医師が支障がないと認めた業務に就かせることはかまいません。

そのほか、産前産後に関する定めとして、休暇中の賃金、平均賃金の計算、年次有給休暇、解雇に関するものがあります。

産前産後に関する定め 内容
休暇中の賃金

賃金は有給でも無給でもかまわないが、どちらにしても労働協約や就業規則に明記しておくことが必要。

平均賃金の計算

計算する場合は算定式の分母から産前産後休暇の日数分を差し引いておこなわなければならない。

年次有給休暇の
出勤率の計算

計算する場合は産前産後休暇中は出勤したものとみなす。

解雇

産前産後休暇中とその後30日間は原則として解雇が制限される。



出産手当金

健康保険の被保険者である場合は、出産すると、出産日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から出産日後8週間(つまり、産前産後の休暇期間)のうち、就労しなかった期間について賃金の3分の2相当額が支給されます。


出産育児一時金

健康保険の被保険者である場合は、出産すると、出産育児一時金が支給されます。被保険者でなく、夫の健康保険の被扶養者である場合は家族出産育児一時金の対象になります。支給額は35万円で直接病院へ支払われるので、一時的な高額自腹負担は不要です。


賃金の非常時払い

使用者は、パート主婦が非常時の費用にあてるために請求したときは、賃金の支払期日が来ていなくても、すでに労働した分の賃金に関しては支払わなければなりません。非常時とはパート主婦本人、またはパート主婦の収入によって生計を維持する者が次のような状態になった場合をいいます。

@出産したとき
A病気になったとき
B災害にあったとき
C結婚したとき
D死亡したとき
Eやむをえない事情で1週間以上帰郷することになったとき





Q&A

Q.1日4時間、週4日パートとして働いています。もともと生理不順で生理痛がひどくなることが多いのですが、生理休暇は認められますか?

A.生理休暇は労働者の労働時間や労働日数に関係なく、「生理日の就業が著しく困難」であれば取得できます。困難であるかどうかの判断は医師の診断書などの証明は必要なく、生理日のあなたの状況をよく知っている同僚などの証言があればよいとされています。


Q.パートで働いていますが、現在妊娠中です。パートでも産前産後の休暇はもらえますか?

A.産前産後の休暇は労働基準法上の女性労働者に対して認められている権利で、パートも労働基準法上の労働者であることから、妊娠4ヵ月以上の分娩であれば休暇を取得することができます。産前休暇は任意休暇で、女性労働者の請求があって初めて認められる休暇です。6週間(双子ちゃん以上の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者が対象です。

産後休暇は強制休暇で、請求の有無に関わらず取得することができます。8週間と定められていますが、産後6週間を経過し、医師が支障がないと認めた場合は仕事に復帰することも可能です。

TOPページ
財団法人女性労働協会

Copyright© 2006-2008 パート主婦のお守り All rights reserved.