社会保険とは
社会保険とは一般的に健康保険と厚生年金保険のことをいいます。健康保険はパート主婦が仕事中以外(プライベート)の理由でケガをしたり、病気になったり、死亡したり、出産したことに関して保険給付を行います。健康保険も厚生年金保険も個人経営の場合は常時5人以上、法人の場合は1人以上の労働者を雇っている場合に適用されます。
社会保険の対象者(被保険者)
パート主婦については一般的に社会保険が適用されるかどうかの判断として、以下の3つの条件をあげています。とくにAについては条件に当てはまるかどうかの重要なポイントなのですが、パート主婦がこの条件に当てはまっているので社会保険に加入したい旨を会社に申し出たところ、会社は保険料の半額負担をしたくないので労働時間を減らし、結果的に社会保険に加入できないどころか賃金まで下がってしまった、という事例もおきています。
社会保険の適用条件
@労働日数、労働時間、就労形態、職務内容などを総合的に判断して、常用的使用関係にある。
A1日、1週間の労働時間や1ヶ月の労働日数が同じ仕事内容の正社員と比較しておおむね4分の3以上である。
B被扶養者でない。
( 夫が社会保険の被保険者である場合、妻であるあなたの年収が130万円未満でおもに夫の収入で生計を維持しているならば、あなたは夫の被扶養者となります。60歳以上の者や障害厚生年金が受けられる程度の障害者の場合は130万円を180万円と読み替えます。)
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上記の3つの条件に当てはまった上で、さらに健康保険と厚生年金保険のそれぞれの適用除外に該当しなければパート主婦も社会保険の対象となります。ここでは厚生年金の適用除外のみをあげておきます。厚生年金保険の適用除外とは厚生年金保険の被保険者になれない者を指します。
厚生年金保険の適用除外
@恩給法に規定される公務員など
A共済組合の組合員・私立学校教職員共済制度の加入者
B日々雇い入れられる者(→1ヵ月を超えて継続使用されれば被保険者となる)
C2ヵ月以内の期間を定めて使用される者(→定められた期間を超えて継続使用されれば被保険者となる)
D季節的業務に使用される者(→初めから4ヵ月を超えて使用される予定である者は被保険者となる)
E臨時的事業の事業所(博覧会など)に使用される者(→初めから6ヵ月を超えて使用される予定である者は被保険者となる)
F事業所の所在地が一定しない事業所(巡回興行など)に使用される者 G外国の年金に関する法令の適用を受ける者
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Cについてですが、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者は健康保険の適用除外となり、加入することができません。これを利用して短期間の有期雇用で労働者を雇い、加入を避ける雇用主がいます。しかし、契約を更新して2ヵ月以上雇用されることになった場合は、加入が義務付けられます。
国民年金の被保険者の種類
国民年金は基礎年金とも呼ばれています。その理由は全国民共通の年金として、公的年金の土台的役割を果たしているからです。厚生年金に加入するパート主婦は国民年金では第2号被保険者となります。厚生年金に加入しないパート主婦
( または専業主婦 ) は、夫が自営業の場合は第1号被保険者、夫がサラリーマンの場合は第3号被保険者となります。以下の表で強制加入のうち、第1号と第2号は保険料を支払わなければなりませんが、第3号は保険料を支払う必要はありません。
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被保険者の種類 |
対象者 |
強制加入 |
第1号被保険者 |
20歳以上60歳未満の自営業者とその配偶者、フリーター、ニート、学生など |
第2号被保険者 |
厚生年金・共済年金に加入している人
( 原則65歳未満 ) |
第3号被保険者 |
20歳以上60歳未満で第2号被保険者の被扶養配偶者 ( サラリーマンの妻など ) |
任意加入 |
日本に住んでいる60歳以上65歳未満の人 |
日本に住んでおり、誕生日が昭和40年4月1日以前で、受給資格期間を満たせない65歳以上70歳未満の人 |
厚生年金の被保険者の種類
厚生年金の被保険者の種類は以下のようになっています。一般的にパート主婦が厚生年金に加入する場合は第2種保険者となります。
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被保険者の種類 |
対象者 |
強制加入 |
第1種被保険者 |
一般男性 |
第2種被保険者 |
一般女性 |
第3種被保険者 |
坑内労働者・船員 |
任意加入 |
任意単独被保険者 |
厚生年金適用外の
事業所に勤める人 |
高齢任意加入被保険者 |
70歳以上で受給資格期間が満たせず、事業所に勤める人 |
厚生年金保険料の計算
厚生年金保険料の計算式は以下のとおりです。厚生年金保険は報酬比例制なので、賃金額を基準として算定される標準報酬月額に一定の保険料率をかけて計算されます。ボーナスが出た場合は標準賞与額をあてはめて計算されます。保険料率は2017年9月まで毎年3.54/1000
( 0.00354 ) ずつ引き上げられることになっており、06年9月から07年8月までの保険料率は146.42/1000 ( 0.14642
) となっています。保険料はパート主婦と事業主が半分ずつ負担します。
パート主婦の厚生年金保険料=標準報酬月額 ( 標準賞与額 ) ×保険料率×1/2
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標準報酬月額とは、原則毎年4月から6月までの3ヵ月間の賃金の平均額を基にして、標準報酬月額等級表にあてはめて決定されるもので、賃金の目安となる金額です。原則として1年に1回見直され、決定されます。標準賞与額とは、ボーナスの1000円未満の端数を切り捨てた金額です。
ではここで、厚生年金保険被保険者のパート主婦の保険料を計算してみましょう。
※月収11万円 ( 年収132万円 ) のパート主婦の場合
パート主婦の厚生年金保険料=11万円×0.14642×1/2=8053円
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ということで、毎月8053円が厚生年金保険料としてお給料から天引きされます。
公的年金制度にはおもに自営業者やフリーター、専業主婦、厚生年金に加入していないパート主婦が加入する国民年金、パート主婦や会社員が加入する厚生年金、公務員が加入する共済年金の3種類があります。以下の表では共済年金は省略しています。
厚生年金から支給される老齢給付は「老齢厚生年金」といいます。障害給付であれば「障害厚生年金」、遺族給付であれば「遺族厚生年金」といいます。しかし、国民年金から支給される老齢給付は「老齢国民年金」とはいいません。「老齢基礎年金」といいます。同じく、障害給付は「障害基礎年金」、遺族給付は「遺族基礎年金」といいます。
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国民年金にのみ加入する者
( 厚生年金未加入のパート主婦・
専業主婦 ) |
厚生年金の対象者
(パート主婦・正社員) |
老齢年金 |
老齢基礎年金 |
(60代前半から)
特別支給の老齢厚生年金
または部分年金 |
(65歳から)
老齢厚生年金
+
老齢基礎年金 |
障害年金 |
障害基礎年金 |
障害厚生年金
+
障害基礎年金
障害手当金 |
遺族年金 |
遺族基礎年金
寡婦年金
死亡一時金 |
遺族厚生年金
+
遺族基礎年金 |
国民年金のみに加入する「厚生年金未加入のパート主婦・専業主婦」は年金給付を受けることになったとき、その支給理由によってそれぞれ老齢基礎年金、障害基礎年金または遺族基礎年金が支給されます。
厚生年金に加入する「パート主婦・正社員」は支給理由が老齢の場合、65歳から老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。 同様に障害年金でも遺族年金でも上乗せされます。
特別支給の老齢厚生年金と部分年金(60代前半)
60代前半から支給される特別支給の老齢厚生年金の支給条件の原則は以下のとおりです。ただし、老齢基礎年金の受給資格期間が25年に満たない場合の特例や、坑内員・船員の特例も適用されるので、特例の該当者であれば受給資格期間が25年なくても受給できたり、60歳になる前に受給できたりします。
特別支給の老齢厚生年金の支給条件 ( 原則 )
@60歳以上であること
A厚生年金の加入期間が1年以上あること
B老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あること
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特別支給の老齢厚生年金は定額部分と報酬比例部分からできており、2年に1度ずつ段階的に支給開始年齢が引き上げられ、いずれは廃止されてしまいます。誕生日が昭和21年4月2日から昭和33年4月1日までの女性は、特別支給の老齢厚生年金が部分年金と呼ばれる報酬比例部分相当額の老齢厚生年金に置き換えられていきます。
( ただし、一定の障害者と厚生年金の長期加入者の特例アリ ) さらにこの部分年金も段階的に廃止され、昭和41年4月2日以降生まれの女性は60代前半の老齢厚生年金を受け取ることはできなくなります。
65歳以降の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金が65歳を機に老齢基礎年金と老齢厚生年金が合体したものに変わり、受給者が死亡するまで支給されます。65歳以降の老齢厚生年金の支給条件の原則は以下のとおりです。ただし、老齢基礎年金の受給資格期間が25年に満たない場合の特例の該当者は25年なくても受給することができます。
65才以降の老齢厚生年金の支給条件 ( 原則 )
@65歳以上であること
A厚生年金の加入期間が1ヶ月以上あること
B老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あること
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在職老齢年金
生まれた年によって差がありますが、早ければ老齢厚生年金は60歳から受給することができます。 ( 一部60歳未満で受給できる例外もあります ) 現在は元気な高齢者が多くなっているので、60歳を超えても働き続ける人が増えてきました。このような人たちは厚生年金の適用事業所で正社員のおおむね4分の3以上の時間働いていれば、70歳になるまで厚生年金の保険料を支払わなければなりません。
保険料を支払いながら受け取る老齢厚生年金のことを在職老齢年金といいます。会社で働いているのでお給料が発生しますが、お給料の金額によって年金額が調整されます。在職老齢年金を受ける場合、年金額は減ることはあっても増えることはありません。減額分の計算は「60歳から65歳まで」と「65歳から70歳まで」で方法が異なります。
07年4月から70歳以上の在職老齢年金の制度が導入されました。ただし、この制度は誕生日が昭和12年4月1日以前の人には適用されません。
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離婚時の年金分割
これは07年4月から導入された制度です。06年10月からは、妻または夫のどちらか一方からの請求により、厚生年金の分割についての必要な情報を社会保険庁が提供できるようになりました。
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いままでは会社員の夫と専業主婦の妻が離婚した場合、老齢基礎年金はともに支給されますが、老齢厚生年金に関しては全額夫のものとなっていました。男は仕事、女は家事をするのが当たり前とされてきた時代に厚生年金保険料を払っていた夫が、退職後多額の老齢厚生年金を受け取るのに対し、妻にはわずかな老齢基礎年金だけという格差が生じていました。これは離婚することになってしまった女性にとっては、経済的に大変厳しい生活を強いられることにつながっていました。しかし、離婚時の年金分割制度導入後は老齢厚生年金を夫婦で分けることができます。
妻が専業主婦の場合、年金額の計算に用いる標準報酬を最高2分の1の割合で分割することができます。分割割合に関しては夫婦で話し合うか、または裁判によって決定します。 ( 08年4月以降の婚姻期間に関しては完全に2分の1ずつになります。) 結婚してから離婚するまでの保険料の支払を2人で行ってきたとみなされるため、分割できるのはあくまで婚姻期間に支払われた保険料に相当する分の年金だけです。夫が独身時代に支払った保険料の分は分割できません。夫婦共働きの場合は最高、2人の収入を足して2で割った金額までの分割をすることができます。
ただし注意したいのは、この分割はあくまで厚生年金の金額に影響することはあっても、受給資格期間には関係ないということです。受給資格期間については妻と夫それぞれが原則25年満たしていないと
( つまり、老齢基礎年金を受給できる資格がないと ) 、厚生年金は支給されませんし、当然,年金分割も意味をなさなくなってしまいます。
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