雇用保険の給付の種類
雇用保険は労働者が失業したり、雇用の継続が困難になった場合に労働者の生活の安定を図り、就職を促進することを目的としたセーフティネットの役割をもっています。雇用保険から給付される給付金には以下のものがあります。
失
業
等
給
付 |
求職者給付 |
基本手当 ( 広域延長給付・訓練延長給付・全国延長給付を含む ) 、傷病手当、技能習得手当 ( 受講手当・通所手当 ) 、寄宿手当、高年齢求職者給付金、特例一時金、日雇労働求職者給付金
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就職促進給付 |
就業促進手当 ( 就業手当・再就職手当・常用就職支度金 ) 、移転費、広域求職活動費
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教育訓練給付 |
教育訓練給付金
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雇用継続給付
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育児休業基本給付金、育児休業者職場復帰給付金、介護休業給付金、高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金
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対象労働者(被保険者)
適用事業に雇用されるパート主婦は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、1年以上引き続き雇用されることが見込まれるときは、雇用保険の対象労働者、つまり被保険者になります。1年以上引き続き雇用されることが見込まれるとはどういうことでしょうか。具体的には次のような状態をいいます。
@期間の定めがない雇用契約であるとき
A雇用期間が1年間であるとき
B1年未満の期間を定めて雇用される場合で、雇用契約に更新規定があり、1年以上の雇用が見込まれるとき ( 1年未満の雇止め規定がある場合を除く )
C1年未満の期間を定めて雇用される場合で、雇用の目的や類似の労働者の過去の就労実績などから見て契約を1年以上にわたって反復更新することが見込まれるとき
|
上記に当てはまらない場合でも、当初の予定に反して1年以上雇用されることがわかった場合は、その時点で対象者となります。また、パート主婦のうち、1週間の所定労働時間が同じ職場の通常の労働者の所定労働時間よりも短く、かつ40時間未満の場合は、短時間就労者と呼ばれます。
適用事業とは農林水産業の一部を除く、労働者を1人以上雇っている事業のことです。農林水産業の一部とは労働者が5人未満の個人経営の事業のことで、これは暫定的に任意適用事業となっています。
( 雇用保険に加入してもしなくてもよい ) ただし、暫定任意適用事業でも、そこで働く労働者の2分の1以上が加入を希望している場合は、事業主は雇用保険加入の手続きをしなくてはなりません。
雇用保険料の計算
雇用保険の保険料は賃金額に保険料率をかけて計算します。保険料率は一般事業、農林水産業と清酒製造業、建設業で違いがあります。下記の表では、パート主婦が支払う雇用保険料の保険料率を表示しています。また、業種に関係なく、4月1日において高年齢継続被保険者である64歳以上の労働者は雇用保険料を支払う必要がありません。
パート主婦の雇用保険料=賃金額×パート主婦の雇用保険料率 |
事業の種類 |
パート主婦の
雇用保険料率 |
一般事業 |
0.006 |
農林水産業と清酒製造業 |
0.007 |
建設業 |
0.007 |
ではここで、一般事業に勤めるパート主婦の雇用保険料を計算してみましょう。
※月収11万円 ( 年収132万円 ) のパート主婦の場合
パート主婦の雇用保険料=11万円×0.006=660円
|
ということで、毎月660円が雇用保険料としてお給料から天引きされます。
受給の条件
基本手当を受給するための条件は3つあります。
@働く意思とその身体的・環境的能力があるにもかかわらず失業していること
A離職によって雇用保険の被保険者でなくなったこと
B算定対象期間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること
|
@に関して、家族介護などが必要な場合は環境的能力がないとみなされ、受給の条件を満たすことはできないと判断される場合があります。この3つの条件を満たす者が求職の申し込みをし、公共職業安定所長
( ハローワークの所長 ) が認定した場合に受給資格者になることができます。
算定対象期間とは原則として離職の日以前2年間のことをいい、被保険者期間とは離職日からさかのぼって1ヵ月ごとに区切り、その各々の期間に賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある場合は被保険者期間1ヵ月と計算されます。ただし、高年齢継続被保険者(離職時の年齢が65歳以上の者)や特定受給資格者(解雇や倒産により離職した者)については、過去1年間の算定対象期間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が6ヵ月以上あればOKです。
受給の手続き
退職後に離職票を会社から受け取ります。その離職票と雇用保険被保険者証、運転免許証などの住所や年齢を確認できるもの、印鑑、顔写真 ( 縦3cm×横2.5cm ) などを準備して自宅のある地域を管轄するハローワークへ行き、求職の申し込みをします。求職の申し込みをして7日後 ( 待機期間終了後 ) 、雇用保険受給説明会に出席し、雇用保険受給者証と失業認定申告書を受け取ります。その後は失業認定日として指定された日にハローワークへ行って失業の認定を受け、基本手当がもらえるのを待ちます。
待機期間と給付制限
基本手当の受給が開始される前に、待機期間というものがあります。上記の3つの受給条件をクリアした受給資格者がハローワークに求職の申し込みをした日から数えて7日間失業の状態が続いていれば基本手当の受給が始まります。この7日間を待機期間といいます。
給付制限とは労働者自身の行為が原因で解雇された場合や、正当な理由なく退職した場合 ( 自己都合退職など ) に1ヶ月以上3ヵ月以内の間、基本手当の支給が受けられないことをいいます。自己都合退職の場合は給付制限期間は3ヵ月ですが、会社都合の退職であれば給付制限はありません。
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基本手当の金額
基本手当の額は原則として以下の数式でもとめられます。
基本手当の総額=賃金日額の50%〜80%相当額×所定給付日数
|
賃金日額とは被保険者期間のうち最後の6ヶ月間の賃金総額を180で割った金額です。50%〜80%というのは受給資格者の年齢や賃金日額によって異なります。
( 60歳〜64歳については45%〜80% ) 所定給付日数は失業中の生活の安定を図り、再就職活動を助けるという視点から、以下の表のように再就職の難易度に応じて細かく定められています。一般の離職者は年齢は問われておらず、勤続年数に応じて90日〜150日となっています。
雇用保険の所定給付日数
離職者の
種類 |
被保険者であった期間 |
1年未満 |
1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 |
一般
離職者 |
90日 |
120日 |
150日 |
倒産
・
解雇に よる離職者 |
30歳未満 |
90日 |
120日 |
180日 |
− |
30歳以上
35歳未満 |
90日 |
180日 |
210日 |
240日 |
35歳以上
45歳未満 |
90日 |
180日 |
240日 |
270日 |
45歳以上
60歳未満 |
90日 |
180日 |
240日 |
270日 |
330日 |
60歳以上
65歳未満 |
90日 |
150日 |
180日 |
210日 |
240日 |
障害者等 |
45歳未満 |
150日 |
300日 |
45歳以上
65歳未満 |
150日 |
360日 |
上記の基本手当の総額を求める計算をする前に注意しなければならないのが、基本手当の上限額の確認です。基本手当の1日分の額を基本手当日額といいますが、この額は年齢によって上限が定められています。
( 06年8月1日現在 )
年齢 |
基本手当日額の上限 |
30歳未満 |
6395円 |
30歳以上45歳未満 |
7100円 |
45歳以上60歳未満 |
7810円 |
60歳以上65歳未満 |
6808円 |
失業の認定と受給手続き
基本手当をもらうには受給資格者の確認後、指定された失業の認定日に地元管轄のハローワークへ行って、離職票と運転免許証などの本人確認ができるものを提出し、失業の認定を受けなければなりません。これは受給資格者が最初に確認を行ったときと同様、労働の意思とその身体的・環境的能力があるにもかかわらず、就職できないでいることを確認するための作業です。失業の認定は原則として4週間に1回行われます。認定後、基本手当は最初の7日間分
( 待機期間 ) を除いて28日分を一括支給されます。
傷病手当
基本手当の受給資格者が離職後、ハローワークに行って求職の申し込みをした後に連続15日以上のケガや病気のために就業できない場合に、基本手当の代わりに支給されます。金額は基本手当と同じです。
技能習得手当
ハローワークの指示によって公共職業訓練を受けた場合に支給されるもので、受講手当と通所手当の2種類があります。公共職業訓練は雇用能力開発機構が運営する職業能力開発促進センター
( ポリテクセンター ) や職業能力開発大学校 ( ポリテクカレッジ) 、都道府県が運営する高等技術専門校で行われています。公共職業訓練には手当の支給対象になるものとならないものがあるので、受講をお考えの方は事前に調べておくことをお勧めします。
職業訓練広場
就職促進給付の中で、就業手当、再就職手当、常用就職支度金の3つをまとめて就業促進手当と呼んでいます。
就業手当
基本手当の受給資格者が就職し、基本手当の支給日数の残り ( 支給残日数 ) が全体の3分の1以上かつ45日以上あって、以下の一定の基準を満たしている場合に支給されます。具体的には新たな就職先でアルバイトなどの常用雇用でない職についた場合に支給されます。
@失業前の事業主に再び雇用されたものではない。
A待期期間 ( 通算7日間 ) が経過した後に職業についたり、事業を始めたりした。
B給付制限を受けて待機期間終了後の1ヵ月以内に就職した場合は、公共職業安定所または職業紹介事業者の紹介によって就職したものである。
C公共職業安定所に求職の申込みをする前に雇用契約を結んだ事業主に雇用されたものではない。
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就業手当の金額は次の数式でもとめられます。
再就職手当
基本手当の受給資格者が安定した職業につき、基本手当の支給日数の残りが全体の3分の1以上かつ45日以上あって、「1年を超えて引き続き雇用されることが確実と見込まれる」などの一定の基準 ( 就業手当の基準とほぼ同じ ) を満たしている場合に支給されます。ただし、過去3年間に再就職手当または常用就職支度手当を受けたことがある場合は支給されません。支給額は原則的に基本手当日額の3割相当額です。
再就職手当の金額=基本手当日額×支給残日数×0.3
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常用就職支度手当
45歳以上の人や身体障害者など政令で定められている就職困難者である基本手当の受給資格者などが安定した職業に就き、「1年を超えて引き続き雇用されることが確実と見込まれる」などの一定の基準を満たしている場合に支給されます。支給額は所定給付日数や支給残日数によって異なります。ただし、過去3年間に再就職手当または常用就職支度手当を受けたことがある場合は支給されません。
原則
常用就職支度手当の金額=基本手当日額×90×0.3
所定給付日数が270日未満かつ支給残日数が90日未満のとき
常用就職支度手当の金額=基本手当日額×支給残日数×0.3
( ただし、支給残日数が45を下回る場合は45とする最低保障がついています )
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教育訓練給付金
教育訓練給付金は労働者の自発的な能力開発を支援するため、一定の条件を満たす教育訓練を終了した場合に入学料と受講料として支給される給付金です。教育訓練給付金の対象者は現在雇用保険の被保険者である者または被保険者でなくなってから
( 会社を辞めてから ) 原則1年以内の者で、被保険者期間が教育訓練の受講開始日に3年以上ある ( 雇用保険に3年以上加入していた ) ことが必要です。
被保険者期間とは受講開始日までの間に同一事業主の適用事業に被保険者として雇用されていた期間のことをいいます。ただし、その会社の前に働いていた会社がある場合は、2つの会社のそれぞれの被保険者期間の間が1年以内であれば通算することができます。給付金額は以下のとおりです。ただし、給付金が8000円以下の場合は支給されません。給付率とは実際にかかった費用の給付金負担割合です。
被保険者期間 |
給付率 |
上限額 |
3年以上5年未満 |
20% |
10万円 |
5年以上 |
40% |
20万円 |
07年10月から被保険者期間の区分が撤廃され、被保険者期間3年以上で給付率20%、上限10万円に一本化されます。ただし、初回に限っては被保険者期間1年以上で利用できます。
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教育訓練給付の対象となる資格と検定
以下は教育訓練給付金の受給対象となっている資格と検定の例です。新しい仕事に就く前に資格や検定を受け、自分を磨くことで自信をもてたり、履歴書に書くことで就職率もアップする可能性があるので、受験を考えてみるのもいいかもしれません。
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画像情報処理検定
(CG検定) |
コンピュータサービス
技能評価試験(CS) |
システムアドミニストレータ
(シスアド) |
情報処理技術者 |
日本語処理技能検定
(日商ワープロ検定) |
ビジネスコンピューティング
検定(ビジコン) |
Microsoft Office
Specialist |
MOT |
実用英語技能検定(英検) |
TOEIC |
TOEFL |
建設業経理事務士 |
秘書技能検定 |
簿記検定・簿記能力検定 |
気象予報士 |
技術士 |
行政書士 |
公認会計士 |
司法書士 |
社会保険労務士 |
司法試験 |
税理士 |
中小企業診断士 |
通関士 |
土地家屋調査士 |
不動産鑑定士 |
電気主任技術者 |
電気通信主任技術者 |
ボイラー技士 |
調理師 |
旅行業務取扱主任者 |
衛生管理者 |
栄養士 |
管理栄養士 |
介護福祉士 |
社会福祉士 |
福祉住環境コーディネータ |
訪問介護員
(ホームヘルパー) |
保育士 |
日本語教育能力検定試験 |
証券アナリスト |
宅地建物取引主任者 |
販売士 |
ファイナンシャルプランナー |
クレーン運転士 |
自動車整備士 |
玉掛技能者 |
フォークリフト運転者 |
インテリアコーディネータ |
インテリアプランナー |
カラーコーディネータ |
技能検定 |
色彩能力検定 |
POP広告クリエータ |
ガス溶接作業主任者 |
危険物取扱者技能検定 |
高圧ガス製造保安責任者 |
公害防止管理者 |
管工事施工管理技士 |
給水装置工事主任技術者 |
建築士 |
建築設備士 |
建築施工管理技士 |
工事担任者
(デジタルアナログ) |
測量士 |
電気工事士 |
電気工事施工管理技士 |
土木施工管理技士 |
造園施工管理技士 |
育児休業基本給付金
対象者は満1歳未満の子供を養育するために育児休業をする雇用保険の被保険者で、休業開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算して12ヶ月以上ある労働者です。2年間のうち、病気、ケガ、出産、事業所の休業などで連続30日以上賃金の支払がなかった期間がある場合は、2年間にその期間を加えることができます
( 最長4年間 ) 。また、保育所に入れなかった場合などで育児休業が例外的に1歳6ヶ月まで認められた場合は給付金の支給も延長されます。
有期雇用者の場合、上記の条件に加えて次のどちらかの条件にあてはまらなければなりません。(1年以下の契約を数回繰り返している場合は期間の定めのない労働者扱いになるので下記の条件は対象外です)
@休業開始時に同じ事業主の下で1年以上継続雇用されていて、かつ休業終了後にその事業主の下で労働契約が更新され、その後3年以上継続雇用される見込みがあること。
(つまり、1年以上継続雇用→育児休業→3年以上継続雇用の予定)
A休業開始時に同じ事業主の下で労働契約が更新され、3年以上継続雇用されており、かつ休業終了後にその事業主の下で1年以上継続雇用される見込みがあること。
(つまり、3年以上継続雇用→育児休業→1年以上継続雇用の予定)
|
支給額は賃金の3割相当額です。ただし、事業主から休業期間中の賃金が支払われ、給付金と休業中賃金の合計額が休業前賃金の8割を超える場合は8割になるように給付金が減額調整されます。賃金が休業前賃金の8割以上支払われる場合は給付金は不支給となります。
育児休業者職場復帰給付金
対象者は育児休業基本給付金の支給を受けることができ ( 支給を受けていなくても良い ) 、休業前に雇用されていた事業主に連続6ヶ月以上雇用されている者です。支給額は休業前賃金の1割相当額です。
介護休業給付金
対象者は対象家族の介護をするために介護休業をする雇用保険の被保険者で、休業開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算して12ヶ月以上ある労働者です。2年間のうち、病気、ケガ、出産、事業所の休業などで連続30日以上賃金の支払がなかった期間がある場合は、2年間にその期間を加えることができます(最長4年間)。日々雇用される者や、一定条件を満たした期間の定めのある者も含まれます。対象家族とは@配偶者
( 事実婚含む )、父母、子、A配偶者の父母、B労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫をいいます。
1人の対象家族が要介護状態になるたびに1回の介護休業がとれます。2回目以降の介護休業がとれるのは以下の条件に当てはまる場合です。
@同一の対象家族が要介護状態から1度回復し、再び要介護状態になったこと
A同一の対象家族について介護休業給付金の支給日数の合計が93日以内であること
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支給金額は支給対象期間ごとに原則、休業開始時賃金の4割相当額となっています。 ただし、事業主から休業期間中の賃金が支払われ、給付金と賃金の合計額が休業前賃金の8割を超える場合は8割になるように給付金が減額調整されます。賃金が休業前賃金の8割以上支払われる場合は給付金は不支給となります。
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