パートタイマー(典型パート)とは
パートタイマーとは短時間労働者のことです。短時間労働者とは1週間の所定労働時間が同じ職場の通常の労働者の所定労働時間よりも短い労働者のことです。
( パートタイム労働法2条 ) 総務省の労働力調査では1週間の労働時間が35時間未満の人が短時間労働者と位置づけられています。パート労働法によると、通常の労働者とは、社会通念にしたがって社内で通常の労働者であると判断されるべき者と定義されています。一般的には正社員を指していうことが多いと思われますが、正社員と呼ばれる労働者がいなくても、フルタイムで働き、社内でも基幹的な業務を行う労働者がいればその者が通常の労働者とみなされ、その者より短い労働時間で働く者をパートタイマーと呼ぶことになります。
つまり、労働法でいうパートタイマーとは労働時間の長さで判断されるわけで、会社独自の呼び名で決まるわけではありません。会社でパートタイマーやアルバイトと呼ばれていても週40時間働く契約になっている人は労働法上は一般労働者
( 正社員 ) 扱いとなりますし、嘱託、契約社員、臨時社員、準社員などと呼ばれていても正社員より1週間の労働時間が短ければ労働法上はパートタイマーになり得るわけです。あくまで判断基準は労働時間であるということです。
パートタイマーの中には労働時間が短いだけでなく、期間の定めのある労働契約 ( 有期労働契約、有期雇用契約、有期契約などと呼ぶ ) を結んでいる人がいます。期限付きの雇用は契約更新を数回繰り返して雇止めする場合に違法な解雇になる可能性があったり、契約の更新を拒否されるのが怖くてパート主婦が上司のセクハラに耐えなければならないなどの原因になってもいます。
常時雇用されているパートを一般的に常用パートといいますが、有期雇用者でも常用パートとみなされる場合があります。「常時雇用されている」とは、具体的には@働く期間の定めがない、A期間が定められていても契約更新で1年以上働いている、またはその予定がある、B正社員の労働時間の4分の3以上働いていることをいいます。
擬似パートとは
別名フルタイムパートとも呼ばれている労働者で、労働時間が1週間に35時間〜40時間、またはそれ以上である人をいいます。さらに厳しい雇用形態として、労働時間に加えて正社員と同じ内容の仕事をし、正社員と同じ責任や配置転換の可能性があるにもかかわらず、パートタイマーの扱いを受けている人たちがいますが、このような労働者は正社員的パートと呼ばれています。正社員的パートは有期雇用などの不安定な雇用である上に、年収300万円以下が大半であることなど労働時間が長い割に賃金が安いのも特徴で、特に待遇の改善が急務である労働形態であるといえます。
かけもちパートとは
かけもちパートとは複数の会社と労働契約を結んで1日に2つ以上の仕事をしたり、1週間のうちに数種類の仕事をする人たちのことです。「かけもち」は「ダブルワーク」と呼ばれることもあります。労働時間が長時間になりやすいので、一般的に割増賃金が発生しやすくなります。複数の職場をかけもちする場合の賃金に関しては以下の注意点のように割増後の賃金について定められていますが、労災や社会保険 ( 健康保険と厚生年金保険 ) については特に定めはありません。この点について、かけもちパートの実態にあわせてどのように適用していくかがこれからの検討課題であるといわれています。
かけもちパートの注意点
1日に2つ以上の職場で働くパート主婦の方をかけもちパートといいますが、この場合労働時間は通算されるので、割増賃金が発生する可能性が高くなるため注意が必要です。
たとえば、パート主婦のみどりさんが1日に○○スーパーと△△工場の2ヶ所で働いていたとします。午前9時から午後4時まで○○スーパーで働き(休憩は1時間)、いったん家に帰って子供の帰宅の確認と夕食の準備をし、夫が帰宅してから△△工場へ行って午後6時から9時まで働いていたとすると…
○○スーパーでの労働時間は6時間、△△工場での労働時間は3時間でみどりさんは1日に9時間働いたことになり、法定労働時間の8時間を超えているので、1時間分の割増賃金が発生します。割増後の時給(午後8時から9時までの分)は通常の時給を1.25倍した金額になり、これを△△工場が2時間分の通常の賃金(午後6時から8時までの分)に加えてみどりさんに支払わなくてはなりません。
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新卒パートとは
学生時代の就職活動で内定がもらえず、卒業後に正社員として就職できなかった若者がフリーターなどになるケースをいいます。そのまま正社員として採用されず、長年にわたってパートタイマーとして働くことになる若者が増えています。とくに就職氷河期と呼ばれた時代に就職活動をしなければならなかった若者たちが、景気が回復しつつある現在でも正社員として雇入れてもらえない状況が問題視されています。中でも団塊ジュニアの世代は子供の頃からその人数の多さゆえに高校、大学の入学試験を突破し、希望の学校へ入学することが難しかった上に、いざ就職の段階になってそれまで以上の厳しい環境にさらされた為、一部では「貧乏くじ世代」とも言われています。ちなみに管理者も貧乏くじ世代です。
高齢者パートとは
定年退職後も一定の収入を維持するために働く労働者のことで、60歳代の比較的元気で意欲ある男性が多いのが特徴です。
パートタイマーの総合的な労働条件による分類
パートタイマーを分類する方法は労働時間、仕事の内容、責任の度合いなどいくつかありますが、これらを総合した労働条件で大きく3つのグループに分ける方法もあります。3つのグループとは次のとおりです。
グループ |
総合的な労働条件 |
A |
仕事の内容、労働時間、責任、権限が正社員と同じで、
配置転換や転勤もある。 |
B |
仕事の内容と労働時間が正社員と同じである。 |
C |
仕事の内容も労働時間も正社員と異なる。 |
パートタイム労働指針では、グループAは「人事異動の幅、頻度、役割の変化、人材のあり方、人材活用の仕組み、運用等」が正社員と事実上同じであるパートタイマー ( =正社員的パート ) とし、グループBは「人材活用の仕組み、運用等」が正社員と異なるパートタイマーとみなしています。グループCはAとBに属さない、その他大勢という扱いで、実際にこのグループに入るパートタイマーが圧倒的に多くなっています。
正社員募集採用時の優先的雇用
パート指針では、事業主が正社員を中途採用しようとしていて、すでに同種の業務に従事しているパート主婦が存在し、そのパート主婦が希望する場合は優先的に雇用するよう努力義務が課されています。同じ仕事であればわざわざ正社員を雇うのではなく、現に働いているパート主婦を正社員にしましょうという意味です。
正社員への転換条件の整備
パート指針では、パート主婦が正社員への転換を希望していて、その能力も持ち合わせていると判断される場合で、事業主とパート主婦のニーズが合致するときは、このパート主婦が正社員へ転換できるような制度を導入することや必要な条件の整備に努めるよう促しています。しかし、実際には正社員への転換条件として、全国対象の転勤や残業を条件としている場合があり、家事や育児、介護の大半を担っているパート主婦にとっては、事実上、道が閉ざされているのと同じです。
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